感情を垂れ流していると身体はどうなるか 〜心技体の鍛錬〜
正しい姿勢のために「筋肉を無視しよう!」のつづきです。
前回記事では、脳をコントロールする方法の一つとして「姿勢が良く、平常心/無表情でいる人の演技を続けてください」と書きました。
「演技」というのは単なるアイデアです。
要は自分の精神を制することができれば何でも良いのです。
メンタルを律することはもちろん簡単ではなく、
逆に人間にとって素でいられる、感じたことをありのままに表現しても許される環境はとても楽です。
心の有様を抑制することなく、そこに甘んじていると身体がどういうことになっていくかを想像してみましょう。
人が誰かに、身体の不調について話している様子を頭に思い浮かべてください。
ご自分のことでも良いです。
初めてのピラティス・セッションでご自分の状態について話した時のこと、病院にかかって医師と話した時の様子などを思い出してみましょう。
私は、身体の愁訴について良い姿勢で話す人を見たことがありません。
厳しい姿勢で臨むことはなく、その他の話題よりもことさら酷い姿勢で話をします。
身体の悪いところについて他人に話す時、話している人はそれを目の前の人に容認してもらいたいのです。
許してもらいたいのです。
ありのままを誰かに認めてもらうことは、とても心地が良いものです。
脳にとっては快感です。
脳はマンネリと惰性を求めているので、そのままの自分を許容されることを望みます。
その望みが叶えられると癖になります。
お年寄りが整形外科に並び、お互いの身体の悪くなったところについて延々と談笑しているのはよくある風景です。
「悪いところ自慢」ですね。
「悪いところを認めてあげる」という脳への快楽を、お互いに与え合っているのです。
病院に通うのが趣味のようになっている人も、医師に怒られることがなく何度でも愁訴を聞いてもらえるからでしょう。
身体の悪い箇所について説明する時の姿勢がみな一様に悪いのは、まずご自分でその悪い箇所を許してあげているためです。
脳が無意識に、自分に対して「悪いところ自慢」をしているのです。それは心地良いです。
それをさらに人に話せば、一度ならず二度までも脳に快感を与えることができます。
自分でも許しているし、さらには人にも許してもらいたい。
つまりは優しくされたいのですね。
お互いに優しさを求め合う「悪いところ自慢」は、本当に良いことなのでしょうか。
「良いところ」は自慢になります。でも、「悪いところ」は自慢になるでしょうか。
単純な話で「悪いところ」は「悪い」です。
本当は修正されるべきです。
自分の過去の行動/生活習慣によって引き起こされた不調、それを声高に宣言するのは実は恥ずかしいことです。
しかし恥じもせずそれを率直に相手に伝え共感し合うことで、自分の行いを否定されないよう回避したいのです。
逆に言えば、自分の行いを否定されるのはそれほど怖いことなのです。
怖いから、人は無意識に自分が甘えられる同類や場所を求めます。
↑このような人前に出しても恥ずかしくない姿勢でいらっしゃる方に対しては、体調不良を開陳しづらいでしょう。
その躊躇を感じるならば、つまり「生活習慣を改善できなくて身体に不調が出るのは『恥ずかしい』こと」と心の底では認識しているのですね。
人は共感を求めるので、一見して厳しいトレーニングをしていると分かる人には甘えられません。
自分の行動を改めるのは面倒なので類友では、何の発展もない「悪いところ自慢」、甘えのループに陥ります。
本当の優しさは大切ですが、「悪いところを認めてあげる」のは偽物の優しさ(社会性)でもあります。
医師も、理学療法士も、ピラティス・インストラクターも「うんうん」と優しく聞いてくれ、自分を受け入れてくれるように見えますが、それは本気でしょうか。
結構、偽物だったりしますよ。
慣れているどころか飽きているレベルで「あ~やっちゃってんな~」「ここまで放っておく方が悪いね」「これじゃ治らないだろう」と全く優しくないことを心の中で思っていることもたくさんあります。
だからといって本音や事実を言うことが必要というわけではありません。
偽物の優しさが欲しい人もいるのです。
延々と「悪いところ自慢」をするのは楽しいものなので、コミュニケーションとしては悪くないと思います。
治るか治らないかは、その人の自由なのです。
そうはいっても医師、理学療法士、ピラティス・インストラクターは仕事ですので、様々な処方、施術、指導を行います。
「これじゃ治らないだろう」の判断は1回でなされるものではありません。
何度通っても変化していかない患者/クライアントの「ありのままでいたい、惰性を許し続けてもらいたい」という心情は態度/見た目/話し方で分かります。
無意識に治りたくない、怠惰の楽に身を任せる、その選択の自由は尊重します。
優しくしてほしいというお望みであれば優しくしましょう。
「甘えるんじゃない」「ここまで放っておく方が悪い」とは言いません。
「整形外科や運動施設に通っても治らない」よく聞くセリフですね。
自分で望んでそこにいるのですから、他人に文句をつける筋合いはないです。
通うだけで変化が起こるほど生活習慣改善は楽なものではありません。
「整形外科や運動施設に通っても治らない」は、「悪いところ自慢」の延長上にある楽しみの一環として言うようにしましょう。
お客様の身体機能が回復/向上するかどうか。
そこについて、私は運動指導者や医師、理学療法士の責任はないと考えています。
私はエクササイズの指導をする立場でしかありませんので、それ以上の介入は難しいです。
我々もまた無力です。できないことはできません。
もっと平たく説明すると、いただいている料金に「姿勢が良くなる代/痩せる代」などは含まれていないのです。
内訳は施設使用料と指導料/人件費のみです。
もし「姿勢が良くなる代/痩せる代」などをいただくするとしたら、とんでもない高額になるでしょう。
「痩せなければ返金」制度のある高額なジムなどは、「痩せる代」を含んだ料金設定です。
厳しく指導してもらえるので、合う人は良いと思います。
返金制度は実際に申請する人が少ないのを見越して設けられています。
「整形外科や運動施設に通っても治らない」は、「治る代」を支払っているという勘違いから発生する愚痴です。
まさか。施設を利用し、処方や指導を受けるだけで料金は発生します。
あとはその指導を実践し、「姿勢を良くする」かどうか、「痩せる」かどうかはご自身の自由に委ねられます。
実践するかしないかは本人に任せられるものなので、返金制度もなく「本当に痩せます」など謳っている場合は逆に疑わしいですね。
誰も他人の脳や身体をコントロールできないので、「本当に痩せます」などとは言えないはずです。
超越的な権限をもってして行動の自由を奪わないと、それは実行できません。
他人の脳や身体を支配するのは洗脳です。私はその方法を知りません。
私は運動指導者であり、職業的使命は「人の身体を鍛えること」です。
「身体は自己責任、身体に対して自覚と責任を持つ」ことを教育していく立場にあります。
姿勢の悪さはだらしなさであり不調に直結するので、それを修正していくのが仕事です。
ご自分の身体をなんとかしたいと考えている方は多いですが、その方法としてピラティスを選ぶなら甘えは許容したくありません。
療法士や治療家(ヒーラー)の方とは似て非なるもので「人を癒すこと」には自覚的でなく、「『私が』人の身体を変えてあげたい」という信念は持ち合わせておりません。
「ご自分で変化していただくしかない」というスタンスです。
他人に不調を治してもらいたい人にはそもそもできないトレーニングなのです。
食べたから太った、全然食べなかったら痩せすぎた、運動不足で体力がなくなった。
全て己の行為計画が為されていないからです。
身体をコントロールしようとせず、ただ状況に流されていてはそうなります。
恥ずかしいことです。
仕方のない場合が多いとは思いますが、本来は堂々と人様に言えることではないですね。
自分の行為から発生した失態を他人に丸投げするのも無理筋です。
恥をしのんで鍛えてください。
周囲に流されるだけではなく自分で意志を持って立たなければ、これからも流れに足を掬われ続けます。
予約があるからただ行くだけ、とにかく毎日疲れている、何も覚えられない、脳を甘やかしておきたい、優しくしてほしい傾向にある方はマッサージや治療家を尋ねた方がベターでしょう。
ピラティスはIntelligent Training(知的訓練)と呼ばれます。
インテリジェンス、知性がなければできません。
考える力がなくても、最低限デモンストレーションを覚えるための記憶力は必要です。
それすら無ければ残念ですが分不相応です。
毎回のセッション料金を捨てているようなものです。
今までにいくら支払って、何が脳に残っていますか?
一人でエクササイズできるようにちゃんと覚えられましたか?
知性(最低ラインは記憶力)を発揮するためには、セッション前に体調を整えることも大切です。
セッションで整えるのではなく、自分で整えてからセッションに臨むのです。
その高度なピラティスを選択すれば、脳をフル稼動させることになります。
これまでに経験したことがない様々なことをどんどん要求されます。
それでもメンタルを律して顔を作り、無表情で淡々と言われたことを全て覚え、実践することで精神と身体を鍛えるのです。
“Body, Mind and Spirit”(体、心と精神)のためにピラティスは開発されました。
心技体すべての修行です。
セッション時間だけがトレーニングではありません。毎日が修行の日々となります。
トレーニングに備えての準備を習慣化する、セッション前に体調を整え頭をクリアにする、座学を復習してから臨む、その繰り返しを日々に導入することによって生活を変えていきたい!と計画される方は改善する希望があります。
厳しいことを言う理由は単なる趣味の習い事やお稽古事ではなく、生きるための身体という人生の根本に関わっていることだからです。
ピラティスに限らず、実は身体を動かすことは須く知性が必要とされます。
それが伴わなければ壊れてしまいます。
行き当たりばったりではなく常に先のことを予測し、行動のための策を立てられるのであれば効果を得られると存じます。
ぜひセッションにお越しください。
私個人は必要以上に他人に甘えても未来に良いことは起こらないと考えており このような方針でセッションを提供していますが、別の場所では「自分が変えてあげたい」と熱心に取り組んでいるインストラクターもいると思います。
合わなければ無理をすることはありません。
色々なタイプのメソッドや指導者がいるのでご自分に合うものが見つかることが身体機能向上の「助け」になるでしょう。
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