教師を選ぶ大切さ1 〜ロコモ予備軍がロコモ予備軍を教えていることもある〜
バレエ/ピラティス界でまことしやかに流れる「四頭筋/殿筋を使ってはいけない」の真意のつづきです。
「インストラクターは自分に合う人を探した方がいい」のは本当です。
インストラクターは絞った方が上達に繋がります。
何が良いのか分からない場合には、まずはレベルの低いレッスンを避けることも重要になります。
ピラティスが怖いのは、講師の善し悪しが分かりづらいところです。
以前は運動指導者になるのは運動経験や実績がある人でした。
今はそうでもありません。
運動のバックグラウンドがなくても、養成コースに参加し合格することができます。
年齢も問われません。運動を専門的にしてこなかった50代でも60代でもそれ以上でも、もちろん大丈夫です。
どなたでも歓迎されます。卒業後インストラクターとして仕事もできると思います。
資格発行団体は養成生/卒業生が少なければ利益が出せず、運営は大変です。
スタジオに来るお客様は養成コース候補生でもあり、運動不足で教えられる側であった立場からコースに入る人も大勢います。
運動が得意ではない人が、どんどん指導資格を取るという流れです。
誰でもインストラクターになれますので、実践値や習熟度が低い指導者はたくさんいます。
そのため お客様と大差ないレベルで教えていることが多いのも現状です。
わたしは養成コースのアシスタントをする中で、年々そういう生徒さんが増えるのを見てきました。
運動のバックグラウンドがないデスクワーカーなどの人がコースに入り、課題のエクササイズすらできないまま卒業していくケースが少なからずあります。実際の身体を見るとアラインメント(骨格の位置)が整わず、ロコモティブシンドローム(運動器障害、要介護)予備軍から脱していないことが多いです。
ロコモティブシンドローム予備軍がロコモティブシンドローム予備軍を教えても、どちらもロコモティブシンドロームになる可能性は高いでしょう。
現実の身体というのは残酷なもので、「変わった気がする」「少し変わった」ではだめなのです。
お手本となるためには「本当に綺麗なアラインメント」になりたいのです。
しかしそれを追求すると、コースを卒業できる人がほとんどいなくなってしまいます。
イントラ資格はロコモ予備軍でも取得できてしまいますので、人に教えていることと運動器障害に抗えるかどうかは関係ありません。
本人のアラインメント(骨格の位置)次第です。
お客様から養成コースへ進むケースが増えているのは、「上手くできないから、もっと学べばできるようになるのではないか」という思いが動機になることが多いです。
そういう人達が、運動経験者と違う大きな点があります。
運動経験者は、「できないことは練習する」のが当たり前です。
練習を積み重ね「できなかったことができるようになる経験」も積み重ねてきています。
「練習でできなかったことができるようになる経験」をしないまま成人して年月が経った人達、今となっては「練習してもそこまで上手くならない人達」が陥りやすいのが、自分の身体では上手くいかないので勉強をたくさんする沼です。
時間がかかる実践に比べて、検索や調べものは簡単です。
自分の身体で理解できるまで挑戦し続けることより、本やネットや雑誌やテレビに何かを見つけようとする。
情報精度が低い場合 提供者は専門家ではないのでしょうが、肝心な判断をするための身体が基準軸として役に立たないと選別ができません。
誰がどのようにして雑誌やテレビ番組を製作しているのか、その裏側には考えを巡らせることなく表面的な情報を取り込んでしまいます。
一方、これまでの人生で練習を積み重ねてきた経験値の高い人は、長年培ってきた自分の身体と動きに確固たるものがあるので、資格や解剖学の知識がなくても運動を教えることができます。
知識は外から仕入れるだけではなく、自分の身体から生み出せるのです。
それはおそらく、過去にそういう経験がなかったとしても身体が存在する限り可能ではあると思います。
ですが自分の身体から知見を生み出した経験がない場合、一人でも自助努力によって学べることを知らないため身体の鍛錬を放棄し、他に目がいってしまいます。
努力するより前に、安易に結果を欲しがるのです。
世界のどこかに、上手くいく方法があると思ってしまうのでしょう。
たくさんの先生に学べば知識は増えますので様々なメソッドのワークショップに参加したり、複数の先生に教えを乞います。
正しい情報を伝えてくださっていても、同じ人間は一人として存在しませんので どの先生も少しずつ選ぶ言葉が違ってくるのは当然です。
参考になることも多いので決して悪いことではないのですが、リテラシーがなければ混乱必至の行為です。
「A先生はこう言ったのに、B先生はこう言った。どっちが正しいんですか」という質問もここから発生します。
これは、繰り返し身体で試して比較するようなことはせず、頭だけで自分にも分かるレベルで教えてほしいという短絡的な要求から来る質問です。
ちゃんと練習を続けることで理解しようと試みたのちには、どちらも正しいと判断できることもあるはずです。
さらに良くないのは、発生した疑問をA先生でもB先生でもなく、なぜかC先生に聞いたりします。
また雑誌や本で読んだことも全部、C先生に聞いたりします。読んだだけで実際やっても(続けても)いないのに。
質問は歓迎ですが、非常識と思われるかもしれません。
A先生に対する質問はA先生へ。
B先生に対する質問はB先生へ。
雑誌に対する質問は編集部へ。
本に対する質問は著者へ。
それが基本です。
情報はそうやって自分の手間を使って集めるものであり、自分の身体を使って練習を続けるのが実践者です。
疑問に思ったことを一括でC先生に聞いて「言葉で分かるように説明してもらいたい、この場で解決してもらいたい」と思うのは、自ら考えようとする知性が欠けているため、たくさん検索したりワークショップを受けたり研究熱心だとしても、人に教えることには向いていません。
そういう人に「練習してくださいね」と言うと、あまりその意味を分かってもらえていないだろうことが多いです。
その人は「練習しているつもり」なのです。動きも、デスクワークしかしていなかった以前より良くなっているのでしょう。だからインストラクターを目指しているのでしょう。
しかしそれが人前に立つ指導者レベルに達しているかと言うと、残念なことが多いです。
分からないことやできないことがたくさんあっても、今まで運動してこなかったのだから できなくて分からなくて当たり前。
まさかそれが、仕事人として不足であるとは思い至りません。
むしろ頑張っているのに、甘えだなんて言われたら心外でしょう。
「人生で経験したことがないことはできない、想像が及ばない」のも仕方ないです。
ですがそれは、プロになるべきではないというのが本当かもしれません。
このような場合、試験に合格しても習ったことをコピーして伝えているだけで、間違ったことを言っていなくても本人が実践できていないのです。
運動経験者の「できないことができるようになった練習量」は、それと比べものにならないのです。
骨格をニュートラル(関節に負荷が少ない位置)にすること、アラインメント(骨格の位置)を整えることは、果てしない鍛錬の先にあります。
本当に、ニュートラルは生半可で獲得できるポジションではないのです…。
ですがイントラ養成コースはたったの半年です。数週間で取れる資格もあります。
それまでどこかで鍛錬を積んでこなかった人に、急に身につくものではありません。
まず、姿勢が悪いインストラクターは避けましょう。
口頭指導についてはなかなか判断できないと思いますので、「何もしていない時の様子が自分がなりたい見た目かどうか」「ちゃんと綺麗なお手本を見せてくれるかどうか」です。
特に後ろ姿はチェックすると分かりやすいです。
動くのはお客様だけでイントラのデモンストレーションをなくすレッスン構成が、ピラティスでは可能です。
デモが少ないレッスンでは運動できる時間が長いかもしれませんが、イントラのレベルが測れず上達しない可能性も高いです。
正しい動きは正しい動きの真似から始まるので、繰り返し頭に叩き込むための見本が必要です。
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デモをあまりしない、またはデモが綺麗じゃない気がする…。その場合も講師を変えることをおすすめします。
さて、養成コース生でなくても、複数の先生に習っている時に「A先生はこう言ったのに、B先生はこう言った。どっちが正しいんだろう?」と分からなくなることもあるかと存じます。
ここにインストラクターを選ぶヒントがあります。
冒頭に述べたように教師は絞った方が上達に繋がり、それには理由があるのですが、選び方が分からない時は…。
つづく。
バレエのためのピラティスを解剖学から教える、完全パーソナルの個人スタジオ 横浜 metamorphoseを主宰しています。
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